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連載「羽生のいま」第5回・子育て

埼玉の川には、こんな魚がいた。羽生・さいたま水族館で出会う身近な生き物たち

さいたま水族館のムサシトミヨ(2024年9月撮影。写真:Totti、CC BY-SA 4.0、ウィキメディア・コモンズ。縮小して掲載)

埼玉県に海はありませんが、利根川や荒川、元荒川が流れ、田んぼの間には用水路が通っています。橋の上から川を眺めることはあっても、その水の中にどんな魚が暮らしているかを知る機会は多くありません。

羽生市の「さいたま水族館」は、埼玉の川や池に暮らす淡水魚を中心に展示している水族館です。2026年には、この水族館で代々飼育してきたムサシトミヨが、新種記載の論文で生きた体の色を示す個体として使われました。

館内の水槽は、荒川を上流から河口まで下る順に並んでいる

さいたま水族館は、羽生市三田ケ谷の羽生水郷公園の中にあります。1983年10月2日に開館し、2022年8月に来館者が1000万人に達しました。

埼玉県内ではこれまでに86種類の魚が採捕されていて、水族館はそのうち展示できる約70種類を中心に見せています。館内は、荒川の約200kmを上流から河口域まで下るように水槽が並んでいます。大きな魚では、体長1mを超えるソウギョやアオウオ、コイ、ニシキゴイがいます。

国の天然記念物のミヤコタナゴ、県の魚のムサシトミヨ、食虫植物のムジナモは、水族館で増やしたものを展示中です。

ムサシトミヨが野生で暮らすのは、世界で熊谷の元荒川だけ

ムサシトミヨは、体長3.5〜6cmのトゲウオの仲間です。背びれ・腹びれ・しりびれにトゲがあり、敵から身を守るときにトゲを立てます。オスが水草で巣を作り、子育てをします。

かつては東京都や埼玉県の湧き水や、そこから流れ出る細い川で記録がありました。生息地の埋め立てや湧き水の枯渇、生活排水の流入で数を減らし、いま野生で見られるのは熊谷市を流れる元荒川の最上流部だけです。埼玉県はここを「世界で唯一の生息地」と案内しています。

埼玉県は1991年11月にムサシトミヨを県の魚に指定しました。天然記念物に指定されているのは魚ではなく生息地です。熊谷市ムサシトミヨ保護センターから下流へ約400mの区間が、県の天然記念物「元荒川ムサシトミヨ生息地」になっていて、魚を捕ることや水草を採ることが制限されています。

ムサシトミヨがすむのは、水温10〜18℃のきれいで冷たい湧き水が流れ、水草が茂る細い川です。生息地のまわりでは湧き水が自然に湧かなくなっていて、保護センターなどが地下水をくみ上げて川の水を保っています。2026年の県の調査では、元荒川のムサシトミヨは推定9,448尾でした。前回の2021年2月の調査では4,754尾でした。

2026年、ムサシトミヨに学名 Pungitius nakamurai が付いた

ムサシトミヨは1963年に初めて報告され、それから60年以上、学名を持たないトミヨ属の一種(Pungitius sp.)として扱われてきました。トミヨ属の魚は種や集団の間で交雑しやすく、属全体の分類が定まっていなかったためです。

2026年4月29日、鹿児島大学総合研究博物館と国立科学博物館の研究者が、ムサシトミヨを新種 Pungitius nakamurai として記載した論文を、日本魚類学会の英文誌で公開しました。論文には生きているときの体の色を示す必要があり、さいたま水族館が、代々飼育してきたムサシトミヨを提供しました。5月27日の発表は、鹿児島大学、国立科学博物館、さいたま水族館の3者の連名です。

さいたま水族館の水槽で見られるムサシトミヨは、元荒川の保全と、新種の記載の両方に関わってきた魚です。

水族館の外には、ムジナモの自生地がある

羽生水郷公園は、食虫植物ムジナモの自生地を含む公園です。「宝蔵寺沼ムジナモ自生地」は、1966年5月4日に国の天然記念物に指定されました。ムジナモは根を持たずに水中を漂い、葉でミジンコなどの小さな生き物を挟んで捕らえます。

指定から3か月後の1966年8月、台風14号でムジナモはほとんど流され、昭和40年代には野生で見られなくなりました。羽生市むじなも保存会の人たちが自宅で育てていた株をもとに放流を続け、2010年に、冬を越して再び浮かんできた株を40数年ぶりに確認しました。2025年、埼玉県のレッドリストでムジナモは「野生絶滅」から「絶滅危惧IA類」に変わり、県内で初めての野生復帰の例になりました。

宝蔵寺沼ムジナモ自生地(2018年7月撮影。写真:あばさー、Public Domain、ウィキメディア・コモンズ。縮小して掲載)

魚も水草も、水の温度と流れが変わると姿を消す

ムサシトミヨは、10〜18℃の湧き水と水草のある細い川でしか暮らせず、いまはくみ上げた地下水で生息地が保たれています。ムジナモは、台風の増水で一度は沼から消え、人の手元に残った株から野生に戻りました。

宝蔵寺沼の自生地には立ち入れませんが、さいたま水族館では、元荒川のムサシトミヨと羽生のムジナモを同じ館内で見られます。

ムジナモが自生地から消えて野生に戻るまでの60年と、水族館でムジナモを見るときの楽しみ方・開館時間・入館料・行き方は、連載「ムジナモのいる町」の2本で書いています。

参考資料

(資料確認日:2026年10月11日)

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