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羽生を知るコラム・食

なぜ北埼玉では小麦をよく食べる? — 米麦二毛作が育てたうどんと粉食文化

明治期の日本の麦刈り。日下部金兵衛撮影の手彩色写真(撮影地は不明。Public Domain、ウィキメディア・コモンズ)

香川県の「讃岐うどん」や秋田県の「稲庭うどん」ほど全国的には知られていないかもしれませんが、埼玉県も古くから小麦栽培とうどん文化が盛んな地域です。

なかでも羽生市や加須市をはじめとする県北部・利根地域では、うどんやまんじゅうなど、小麦粉を使った料理が暮らしの中で親しまれてきました。

なぜ、この地域ではこれほど小麦料理が身近になったのでしょうか。

その背景にあるのが、米を収穫したあとの田んぼで麦を育てる「米麦二毛作(べいばくにもうさく)」です。

1. 北埼玉は「米と麦」を育てる土地だった

埼玉県北部から利根地域にかけては、小麦栽培が盛んな地域です。

この地域で行われてきたのが、ひとつの水田で米と麦を育てる「米麦二毛作」です。

秋に米を収穫したあとに麦をまき、冬から春にかけて育て、初夏に収穫します。そして再び、その水田で米を育てます。ひとつの土地を一年を通して使う農業です。

初夏を迎える5月下旬から6月ごろには、実った麦が黄金色に染まります。

この季節は「麦秋(ばくしゅう)」と呼ばれます。「秋」という字が入っていますが、麦にとっての収穫の季節という意味です。

現在でも農林水産省は、埼玉県の小麦の主な生産地として、県北部や利根地域を挙げています。

北埼玉にとって、小麦は昔から身近な農作物だったのです。

2. 「朝まんじゅうに昼うどん」 暮らしに溶け込んだ小麦料理

身近に小麦があれば、その小麦を使った料理も生まれます。

埼玉には、

「朝まんじゅうに昼うどん」

という言葉があるほど、うどんやまんじゅうなどの小麦料理が暮らしの中で親しまれてきました。

農林水産省の「うちの郷土料理」でも、裏作として小麦を栽培してきた地域では、この言葉が生まれるほど、うどんやまんじゅうなどの小麦粉料理が発達したと紹介されています。

なかでも、うどんは農家の日常的な食事として定着していきました。

そして小麦料理が登場するのは、普段の食卓だけではありません。

冠婚葬祭や年中行事など、人が集まる日にも、うどんは食べられてきました。

小麦は、毎日の暮らしにも、人が集まる特別な日にも登場する食材だったのです。

3. 小麦から生まれた、地域のさまざまな味

小麦栽培が盛んな埼玉では、うどんをはじめ、小麦粉を使ったさまざまな郷土料理が生まれました。

加須うどん

羽生市の隣、加須市は手打ちうどんの街として知られています。

加須市によると、加須の手打ちうどん屋の始まりは、今から約300年前の江戸時代のなかばです。利根川の渡舟場や、不動岡にある總願寺(不動ヶ岡不動尊)の門前で、参拝客をうどんでもてなしたのが始まりといわれています。

手打ちうどんは、今も加須を代表する食文化のひとつです。

いがまんじゅう

羽生市や加須市、行田市、鴻巣市など県北東部には、「いがまんじゅう」という一風変わった郷土料理も伝わっています。

小麦粉で作ったまんじゅうを赤飯で包んだもので、外側についた米粒が栗の「いが」のように見えることから、この名前がついたといわれています。

農林水産省によると、いがまんじゅうは春・夏・秋のお祭りや祝い事の縁起物として、家庭で作られてきました。

羽生市は、いがまんじゅうを「赤飯とまんじゅうをいっぺんに作って手間を省くという農家のお嫁さんの知恵から生まれた」と紹介しています。忙しい農家の暮らしから生まれた、北埼玉らしい郷土の味です。

4. 「うどんの街」だけではない、北埼玉の粉食文化

こうして見てみると、北埼玉の食文化を「うどんが有名な地域」というだけで捉えると、その背景の一部しか見えてきません。

田んぼで米を育て、その裏作として麦を育てる。

収穫した小麦を、うどんやまんじゅうなどさまざまな料理にして食べる。

普段の食事だけでなく、人が集まる日にも小麦料理を囲む。

米麦二毛作によって小麦が身近にあったことが、この地域ならではの多彩な粉食文化につながっていきました。

おわりに:小麦の歴史を感じて味わう一杯

田んぼで続けられてきた、米と麦の二毛作。

北埼玉で味わう一杯のうどんの背景には、この土地で小麦を育て、さまざまな形で味わってきた人々の暮らしがあります。

初夏には、今でも黄金色に染まった麦畑を見ることができます。

うどんを食べるとき、そんな田園風景と北埼玉の小麦の歴史に、少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

参考資料

関連リンク

※地域の食文化には、家庭や地区によってさまざまな伝承があります。本記事では農林水産省と自治体の公開資料で確認できる内容を中心に紹介しています。

(資料確認日:2026年10月4日)

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