連載「羽生のいま」第1回・子育て
昔の洋品店に、いま子ども服が集まる — 羽生「おかねのいらないおたから市」
羽生の松原通り商店会に、一風変わった場所があります。
名前は「MD Library(エムディーライブラリー)」。
もともとは、この商店街にあった洋品店「三越屋」の建物でした。2024年の時点で築56年になります。
かつて洋品店だったその場所に、いま、再びたくさんの服が集まる日があります。
ただし、売るためではありません。
集まるのは、子どもたちが成長して着られなくなった服。そしてやって来るのは、子ども服を譲りたい人と、譲り受けたい人たちです。
イベントの名前は「おかねのいらないおたから市」。
まちづくりに取り組む MALL DESIGN が開いている、子供用品のおさがりイベントです。
元洋品店だった場所に、時を経て、今度は「お下がり」の子ども服が集まる。
洋品店だったこととこのイベントが始まったことに、直接の関係はありません。それでも、服を介して人が行き交う場所になっているという重なりには、ちょっと面白いものがあります。
1. 「お下がり」から、人と人がつながる
子ども服は、本当にあっという間に着られなくなります。
お気に入りだったのに、気づけば袖が短い。
まだきれいなのに、もう小さい。
捨ててしまうのはもったいないけれど、家に置いておけばどんどん増えていく……。
「おかねのいらないおたから市」は、そんな子ども用品を次の誰かへつなぐイベントです。
始まりは2023年2月。会場の MD Library は、子ども服を譲る人と譲り受ける人でにぎわい、2024年には毎月恒例の催しになりました。
買ったり売ったりするフリーマーケットとは少し違います。
ある家庭では役目を終えた一着が、今度は別の子どもの一着になる。
小さな「お下がり」をきっかけに、人と人がつながっていきます。
2. 会場そのものも「次へつないだ場所」
「おたから市」の面白さを知るには、会場の MD Library についても少し知っておきたいところです。
MD Library は、新しく建てられた公共施設ではありません。
松原通り商店会にあった元洋品店「三越屋」の建物を、再生して使っている場所です。
コンセプトは「まちのえき」。
館内には本を読める図書室のほか、仕事に使えるスモールオフィスや自習室があり、教室、セミナー、イベント、展示にも使われています。
館内の本や家具は、地域の個人や団体、施設から寄贈されたものです。
そう考えてみると、ちょっと面白くありませんか。
使われなくなった店舗を、街の新しい居場所へ。
読み終えた本や使わなくなった家具を、次の人へ。
そして、着られなくなった子ども服も、次の子どもへ。
MD Library には、「今あるものを、もう一度誰かにつなぐ」風景がいくつも重なっています。
3. なぜ、子育てイベントを「商店街」で?
「おかねのいらないおたから市」は、単なるリユースイベントではありません。
MALL DESIGN は、このイベントを通じて「商店街エリアに子育て世帯のコミュニティを醸成し、商店街の活性化へとつなげていきます」としています。
子ども服の受け渡しは、人が街へ出てくるきっかけでもあるのです。
実際、ここで生まれているのは服の受け渡しだけではありません。
2024年3月の「まちのえきびらき」の日には、「子育てに悩んでいた時MD Libraryに出合い、スタッフの方に相談できて救われた」と振り返る人がいました。
別の人は、「着なくなった服を持ってきて、普段買わないものを試せるので楽しみ」と話していました。
子ども服をきっかけに MD Library を知る。そこで誰かと話す。そして、街との接点がひとつ増える。
そんな役割も、この場所には生まれています。
4. 500人以上が訪れた日。人の流れは商店街へ
この取り組みが MD Library の建物の中だけで終わっていないことがわかる日があります。
2024年3月24日、MD Library の3周年を祝う「まちのえきびらき」です。
この日のおたから市には、500人を超える人が訪れました。0歳の赤ちゃんから80歳の方まで、来場者の年齢もさまざまでした。
この日に開かれたのは、おたから市だけではありません。
MD Library 南側の空き地では木工体験、空き店舗では羽生で創業を予定している女性によるヨガ教室、閉店した呉服店では在庫の売り尽くしセールが開かれました。
一軒の元洋品店を「まちのえき」にする。
そこへ親子がやって来る。
そして、その人の流れが周りの空き店舗や空き地にも広がっていく。
羽生のまちなかで進んでいるのは、古い商店街をすべて新しく造り替えることではありません。今ある場所をもう一度使いながら、新しい役割をつくっていく試みです。
5. 「昔の羽生」だけじゃない。今のまちなかを歩いてみる
羽生城、『田舎教師』、武州正藍染。
羽生の街を歩いていると、この土地に積み重なってきた歴史に何度も出会います。
でも、羽生の面白さは「昔」を訪ねることだけではありません。
昔からある商店街の建物を残しながら、今の暮らしに必要な場所へと使い直す。
そこに子育て中の家族がやって来て、子ども服が次の子へ渡っていく。
MD Library と「おかねのいらないおたから市」は、そんな現在進行形の羽生を知ることができる場所のひとつです。
元洋品店に、再び服が集まる。
今度は商品としてではなく、誰かから誰かへ渡すために。
次の開催情報を見つけたら、お子さんと一緒に松原通り商店会を歩いてみてはいかがでしょう。
子ども服の一着から、これまで知らなかった羽生の「まちなか」が見えてくるかもしれません。
お出かけ前に
「おかねのいらないおたから市」は2023年2月に始まり、2024年には毎月恒例の催しになっていました。
開催日時や、持ち込み・受け取りのルールは変わることがあります。お出かけ前に、MALL DESIGN の公式サイトや Instagram で最新の情報をご確認ください。
参考資料
- 羽生市「【MALL DESIGN】親子交流イベント『おかねのいらないおたから市』を開催!」(2023年2月8日)
- 羽生市「【MALL DESIGN】子育て世代交流イベント『おかねのいらないおたから市』を開催!」(2023年6月25日)
- 羽生市「【MALL DESIGN】3月24日(日)『まちのえきびらき』を開催します!」
- 羽生市「3月24日(日)『まちのえきびらき』を開催しました!」(2024年3月27日)
- MALL DESIGN「MD Library」
- 熊谷経済新聞「羽生のMD Libraryが3周年 『まちのえきびらき』で商店街の活性化に」(2024年3月27日)
関連リンク
(資料確認日:2026年10月4日)